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富田薫|いやいやいやいや〜富田デス。

これぞ巨匠の作品!「ゲティ家の身代金」

2018/05/24

1970年代のムードの再現が完璧。

母親が誘拐犯と直接交渉してしまうのも70年代ならでは。

マーク・ウォールバーグがゲイル家のアドバイザーとなる元CIAの交渉人役で登場。

いや〜クリストファー・プラマーの存在感はスゴイですよ!

誘拐の被害者ジョン・ポール・ゲティ三世は常に絶望的な状況で…。

リドリー・スコット監督だけに「ディレクターズ・カット版」も楽しみです。

(c)2017 ALL THE MONEY US, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
 これぞ「巨匠の作品」である。舞台となる1970年代のイタリアの街角や主人公の豪邸のシルエットからは、有名絵画のような空気が漂ってくる。

 実際の誘拐事件を扱っているので、最初は「サスペンス映画」と思って見始めるが、本当の題材は「人間の深淵」だとわかり、面白さは2倍にも3倍にも膨らんできた。同時に、監督のリドリー・スコットが「エイリアン(1979)」「ブレードランナー(1982)」「ハンニバル(2001)」といった対角線上にある「荒唐無稽な作品」も成功させていることを考えると、その演出力のすごさには脱帽するしかない。

 1973(昭和48)年、当時「世界一の大富豪」でアメリカの石油王ジャン・ポール・ゲティの孫、ゲティ三世が誘拐され、およそ50億円の身代金が要求される。1兆4千億円もの資産を持つ祖父・ゲティにとってはある意味で「はした金」。しかし彼は「極端なケチ」という特異なキャラの持ち主で、びた一文支払わないと宣言する。

 息子を取り戻したい母親(ミシェル・ウィリアムズ)は、誘拐犯だけではなく、義理の父とも壮烈なバトルを繰り広げる…という展開。

 これが「いわくつきの作品」と呼ばれる理由は、祖父・ゲティ役で全シーンを撮り終わっていたケヴィン・スペイシーの突然の降板だ。ニュースでも報じられたが、原因は彼による「セクハラ疑惑」で、最近の「♯MeToo現象」からすれば、監督も映画会社も看過できない。

 そこで、公開まで1ヶ月しかないのに彼の登場シーンをすべて撮影し直すという気が遠くなるようなことになり、クリストファー・プラマーが代役として登場する。

 ここからが驚くべき話で、スクリーン上の彼の風貌は、オリジナル版では特殊メイクでケヴィン・スペイシーが演じたそれにそっくりだったのだ。元々この作品に興味を持っていた私は、アメリカ映画のサイトでオリジナル予告編を見ているから間違いない。

 さらに2つ目のビックリは、当初から監督が望んでいた祖父・ゲティ役はクリストファー・プラマーその人だったこと。
 
 しかも3つ目には、彼がその演技で第90回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、演技部門でのノミネート最高齢記録(88歳)を更新してしまったのである。

 絶望的な環境に置かれた被害者・ゲティ三世からの「最後まであきらめてはいけない」というメッセージは「もうお蔵入りしかない」と思えたこの作品にも重なるのだった。

 ※5月25日(金)から「中洲大洋」「ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13」ほかで全国ロードショー
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