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アナウンサールーム > 富田薫 > 日記

富田薫|いやいやいやいや〜富田デス。

アポロ11号の月面着陸を忠実に再現!『ファースト・マン』

2019/01/31

ライアン・ゴズリングは「ラ・ラ・ランド」に「ブレードランナー 2049」にコレですから、どこまでが守備範囲なの?

宇宙空間の映像もリアリティがあって…。

宇宙船内や宇宙服の質感が抜群。

月面着陸前は危機一髪の連続で…。

奥さんとのやりとりには「そうだよな〜」とうなずくことばかりで…。

(c)Universal Pictures
 アメリカにこんなホラ話がある。「人類は月に行っていない。アポロ計画は捏造で、月面着陸の映像はスタンリー・キューブリック監督が制作したものだ…」と。

 一瞬、そのホラが本当に思えるくらい難しいミッションだったことを痛感させられる作品だった。「アポロ月着陸船」が着地するまでの数分間を筆頭に、最初から最後までまばたきすらできないような緊張感が続くのだ。

 当時中学生だった自分が、テレビの生中継を見るために人生ではじめて徹夜をした1969(昭和44)年7月20日のアポロ11号の月面着陸。あのエピソードを中心にライアン・ゴズリング演じるニール・アームストロング船長の半生が描かれる。

 冒頭は、1961(昭和36)年のテストパイロット時代。彼と娘とのやりとりは「そんなことがあったのか!」と驚くと同時に、物語終盤での重要な展開を予告するものだった。

 実話に基づいているが、今まで知らなかったエピソードのオンパレード。ライアン・ゴズリングの“アームストロングぶり”に加え、デイミアン・チャゼル監督の演出は、さすが「ラ・ラ・ランド」のコンビという印象。

 自分は、最先端技術を備えたTジョイ博多の「ドルビーシネマ」で鑑賞したが、画面の大きさに加え「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」という立体音響技術が秀逸。

 具体的には、会話シーンでの“蛍光灯のノイズ”まで耳に届く。さらには空気の流れるような音を感じたが、さすがにそれは気のせいだろうと思っていると、宇宙空間のシーンでは完全に無音になったので、繊細な音まで表現できることがわかる。なので、劇場の大画面での体験を強くお勧めしたい。

 宇宙空間を描くためには気が遠くなるような手間がかかる。月面でのシーンは、まさに「カプリコン・1(1977)」のようにセットで撮影すれば天候に左右されないが、驚くべきことにアトランタ南部のある場所でロケが行われた。月面に見せるための照明にはかなりの苦労があっただろう。

 そして、アームストロングたちが窓から見ている宇宙空間は、LEDに映し出された本物のNASAのアーカイブ映像で、俳優陣は実際にそれを見ながら演技しているのだ。

 グリーンバックで会話を撮影し、後はCGでなんでもありの時代なのに、モノづくりの熱気を感じるこだわりなのである。

 エンディングは「帰還した彼らが大勢のNASAのスタッフに拍手で迎えられて…」と思い込んでいるとこれが大間違い。「人類にとっては大きな飛躍」を成し遂げた人間が、無事地球に戻ってきた時にどうなるか?実話ならではのリアリティを感じたのだった。

 ※東宝東和の配給で2019年2月8日(金)から全国ロードショー

演技巧者が集まるとこうなります!『天才作家の妻−40年目の真実−』

2019/01/23

「ノーベル文学賞」受賞の電話が鳴ると同時にサスペンス劇場がはじまり…。

若い頃の2人を演じたのはハリー・ロイドとグレン・クローズの実の娘アニー・スターク。

71歳のクローズの演技は、まさに円熟の域。

「ノーベル賞授賞式の舞台裏」をのぞき見している気になってきて…。

クセのある編集者を演じたクリスチャン・スレーターもいい味を出していました。

“天才作家”夫婦の秘密を探ろうと息子に近づいて…。

(c)META FILM LONDON LIMITED 2017
 原作(メグ・ウォリッツァー著)の設定は、あまり有名ではないフィンランドの文学賞だったという。それを「ノーベル文学賞」に変えたことが大成功。最後まで薄氷を踏むような緊迫感が加わったからだ。

 それは「あくまでもフィクションですよ」と強調しなければ、ノーベル財団の気分を損ねるかもしれないほどのレベルだった。

 冒頭は夫婦のたわい無い会話なので、コメディ?権威を皮肉る作品?と思わせるが、それは監督(ビョルン・ルンゲ)による完全なフェイント。受賞を知らせる電話が鳴るとともにサスペンスの幕が開く。

 “天才作家”を演じるのは「パイレーツ・オブ・カリビアン」の総督でもおなじみのジョナサン・プライス。浮気癖のひどい大作家の役だが、舌打ちひとつで「お下品さ」を醸し出すところはさすが。

 主人公は、その妻のグレン・クローズで、アカデミー賞前哨戦のゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)受賞も当然だろう。

 数多くのものを胸の内に秘めているが、そのすべてを台詞によって吐露するわけではない。表情やまなざしだけで表現しなくてはならない難易度の高いキャラクターなのだ。

 クリスチャン・スレーター扮する編集者とのやりとりでは、本音とは全く違う姿を体現しなくてはならないが、それも完璧だった。

 他の共演者も巧みな演技を見せてくれる。途中から登場する女性カメラマンは明らかに何かありそうな表情で案の定その通りになるし、天才作家の息子の態度にも「あるある〜」と思わずうなずいてしまった。

 さらに、回想シーンで若い頃のグレン・クローズを演じたのが実の娘のアニー・スタークと知ってビックリ。演技にも遺伝があるのかもしれない。

 授賞式のために大西洋を渡るシーンでは“コンコルド”が登場。ロケ地はスコットランドなので、イースト・フォーチュン国立航空博物館にある実機で撮影が行われたと思われる。行き帰りの機内で重要なシーンが展開するが、飛行していたのは2003年までだから、さりげなく設定年代を表現する上手い手法だった。

 この原稿を書いているタイミングで、グレン・クローズが今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたニュースが入ってきた。

 なんと過去6回ノミネートされたがいまだに無冠。対抗馬は「アリー/スター誕生」で映画初主演のレディー・ガガだと聞いて、2月25日(日本時間)の発表が「ノーベル賞なみに」気になってきたのだった。

※1月26日(土)より全国ロードショー

必ず、ひとりで見てください!「サスペリア」

2019/01/16

主人公のダコタ・ジョンソンは子供時代からダンスをしていたとのことだが、それにしてもスゴイ迫力だった。

ティルダ・スウィントンは複数の役を演じ分けていて…。

コンテンポラリー・ダンスのシーンには独特の「様式美」が漂い…。

(c)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.
 「出るぞ、出るぞ〜」と、あからさまな恐怖が次々と襲ってくるばかりがホラー映画ではない。生理的・心理的に湧き上がる恐怖を描いた作品もあるにはあるが、それは少数派。この「サスペリア」は、その両方を兼ね備えた稀有な作品だ。上映時間の2時間33分も含めて…。

 1977年公開の“本家”と同じ「決して、ひとりでは見ないでください」のキャッチコピーが使われたので、リメイクかと思って観ていたが、基本的な設定が同じだけ。

 「エクソシスト」「オーメン」と共に“世界三大ホラー”と並び称されるこの作品で、イタリア出身のルカ・グァダニーノ監督は“本家”よりも高い完成度の世界観を構築した。

 彼は「13歳で初めて観たときは、まさに脳天直撃!それからの人生で“サスペリア”は頭の中を駆け巡り私を支配してきた。映画監督になった理由のひとつだ」と語る。とすれば、この企画を30年以上あたためてきたわけだから恐れ入る。

 物語の冒頭、クロエ・グレース・モレッツ扮するパトリシアと精神科医との会話によって状況説明が行われるので“本家”を見ていなくても戸惑うことはない。

 「フィフティ・シェイズ」シリーズのダコタ・ジョンソン演じる主人公の出身地はニューヨークからオハイオへと変わり、最初の登場シーンもタクシーではなく地下鉄に徒歩。ただ「ベルリンでは雨が降ると、みんながタクシーに乗る」という台詞にオマージュ(尊敬・敬意)を感じることができた。

 舞台もバレエの寄宿学校からコンテンポラリー・ダンスのカンパニーになったが、その前衛的な動きと、ある恐ろしい出来事がシンクロし、絶大な効果を上げている。

 さらに特筆すべきはそのダンス・カンパニーの主宰者を演じるティルダ・スウィントン。「明らかに何かがある」怖さを醸し出しつつ、特殊メイクで別の重要人物も演じていたのには驚かされた。

 “本家”ではイタリアのプログレッシブ・ロック・バンド「ゴブリン(Goblin)」が担当した印象的なサントラは、イギリスのロックバンド「レディオヘッド」のトム・ヨークの仕事になった。

 ロケ地探しや美術の制作も監督との共同作業になり、使う楽器も含めて1年ほどの時間をかけている。なので、後半のヤマ場で登場するそのサウンドには、思わず「待ってました!」という心の声が出るほどだった。

 時代背景となっている1977年10月のドイツ赤軍による「ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件」のニュースが徹頭徹尾挿入され、これが「もうひとつの主題」に関係していることが容易にわかる。

 見終わったあとで「ヴィジュアル化された恐怖」に加え「心の中で湧き上がる恐怖」に身をゆだねるためにも、劇場には「おひとりで行くこと」を強くお勧めしたい作品だ。

※1月25日(金)から全国ロードショー

これは「骨太のドキュメンタリー」…『ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー』

2019/01/04

全盛期の忙しさは想像を絶するものがあって…。

父親のジョン・ヒューストンも登場。彼にも意外な一面が…。

ボビー・ブラウンとの間に生まれた娘のボビー・クリスティーナ・ブラウンのエピソードも…。

とにかく親戚関係の証言が数多く登場。それらがドキュメンタリーのコアになっていく。

(c)2018 WH Films Ltd.
 2012年2月11日に48歳で亡くなったホイットニー・ヒューストンの人生を描く作品だが、彼女の遺産管理などを行う財団が「初公認」した骨太のドキュメンタリーに仕上がっている。

 監督は『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したケヴィン・マクドナルド。最初は乗り気でなかったという彼は、引き受けた理由をこう話す。

 「大家族やレコード会社を相手に映画を作る場合、いろいろな人たちが口出しして面倒なことになる。だから自分に最終決定権を与えてくれるならやると言ったんだ」と。

 なるほど、これが「報道ドキュメンタリー」として秀作になった理由のひとつだろう。彼は過去のうわさ話やゴシップにとらわれず、ホイットニーの生きざまを明らかにすることを心がけた。

 登場するのは、ヘアスタイリストや振付師、音楽関係者、マネージャーなど、仕事で彼女と関わりのあった人物はもちろん、母親のシシー・ヒューストンをはじめとする家族や遠い親戚まで多岐にわたる。

 その直撃インタビューは監督のケヴィン自らが行っており、特に結婚生活を共にしたボビー・ブラウンに対して食い下がる様子は、アメリカ3大ネットワークなみのレベルだった。

 当然ながら、大量のプライベート・ビデオやアーカイブ映像が登場するので、その確認だけでも気が遠くなる膨大な時間がかかったはずだ。当時ライバル視されていたジャネット・ジャクソンやポーラ・アブドゥルについて語るシーンは、音楽ファンならずとも興味深い内容になっている。

 中盤で披露される「第25回スーパーボウル(1991)」での伝説的なアメリカ国歌(THE STAR SPANGLED BANNER)斉唱には一般市民の「彼女の歌はアメリカ国歌に命を吹き込んだ」というコメントが挿入され、改めてその才能のスゴさを感じることができる。しかし、それらの映像は意図的に短めになっており、この作品が単なる「ノスタルジー」が目的ではないことがわかる。

 後半になると、彼女の不遇な子供時代や、ファミリーにまつわる踏み込んだエピソードもあって、あれだけのミュージシャンにもかかわらず、初めて触れる情報にも出くわした。

 最後は「ボディガード」でもおなじみの「アイ・ハヴ・ナッシング」を歌う彼女の全盛期のステージ映像で幕がおりる。いつまでも聴いていたいと思える素晴らしい歌声によって、アメリカ社会が抱える様々な問題が頭の中に浮かびあがり、何とも不思議な感覚になるのだった。

 ※1月4日(金)からKBCシネマにて公開
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