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| 【2006.7.12】 金剛山。昔、活躍したお相撲さんの四股名ではない。北朝鮮と韓国の軍事境界線近くにあるか北朝鮮側にある山だ。写真を見ていただきたい。美しい海岸線の先に見える、山肌があらわになった山、金剛山だ。クムガンサンと呼ぶ。 写真撮影した場所は、韓国側の軍事境界線すぐそばにある高城(コソン)統一展望台。眼下に広がる美しい海岸線と稜線。人の影は一切無い。砂浜にはごみ一つ見えずとても美しい。胸いっぱいに吸い込む空気は緑の香りがして実にうまい。しかしその美しさの裏には悲しい現実が横たわっている。同じアングルの別の写真に目を向けて欲しい。美しい風景の中に信じられないものが写り込んでいる。鉄条網だ。朝鮮戦争による南北分断という現実。自由に南北を横断することは出来ない。鉄条網は軍事境界線から海岸線まで長い距離、張り巡らされている。 6月26日(月)から7月1日(土)までの6日間、私は取材で、この南北軍事境界線に来ていた。横田めぐみさんの元夫の可能性が高い韓国人拉致被害者「金英男・キムヨンナムさん」の家族が南北離散華族再会事業に参加、実に28年ぶりの再会を果たすということで、この高城統一展望台まで足を伸ばした。山肌があらわになった金剛山の裏側(北側)にあるホテルで、28年ぶりの再会が果たされた。本当は北朝鮮の金剛山にまで足を伸ばし、取材をしたい。しかし日本のメディア各社は北朝鮮入りの許可は得られず、韓国代表取材団から届けられるプール取材を元に、連日高城統一展望台からニュースを発信した。 半年近く取材を通し接してきた金ヨンナムさんの母・崔桂月(チェ・ゲウォル)さんと姉の金英子(キム・ヨンジャ)さん。28年ぶりの再会は、テレビニュースを通じ、ご覧になった方も多いと思うが、私も感動のシーンをテレビで見て胸が熱くなった。再会のあの一瞬で、28年の苦労を重ねた歳月は吹っ飛んだに違いない。何度見てもあの再会のシーンは胸が熱くなる。しかし出会いのあとには当然、別れはある。28年ぶりの再会の3日後、母と姉は、金ヨンナムさんを北朝鮮に残し、韓国に戻ってきた。3日ぶりの2人は元気な様子ではあったが、どこか焦点が合っていないというかポーッとした雰囲気だった。 その時、私は思い出した。2人(崔桂月さんと金英子さん)同行取材で東京に行ったときだ。2人は横田夫妻や蓮池夫妻から、北朝鮮に行くことは再考したほうが良いといわれたと語っていた。北朝鮮で裕福に幸せそうな姿を見せる金英男さん。北朝鮮の工作員として働かされ、自由を奪われた28年間を金英男さんは、北朝鮮の指導者のおかげで苦労もなく、自分は拉致されたのではなく、漂流中にたまたま通りかかった北朝鮮の船に助けられたと説明した。拉致を認めるどころか、北朝鮮を賞賛したのだ。北朝鮮は拉致を闇に葬り去ろうとしている。日本の拉致事件もすべて解決済みと繰り返し、金英男さんにも同様のスピーチをさせた。誰一人、金英男さんの発言をその通り信じる人はいない。 私は思う。北朝鮮はヨンナムさんを完全にプロパガンダに使い、彼を都合のいい見事なスポークスマンに仕立て上げた。彼は北朝鮮からウソを言わされたのだ。恐らく本意ではない。彼もまた恐怖政治の犠牲者だ。北朝鮮の指示通りに発言しなければ彼の身も危うい。拉致されたにも関わらず自ら拉致とは言えない。またその発言を鵜呑みにせざるを得ない母親と姉。ウソにウソを重ねる北朝鮮の現実はミサイル発射という愚昧な暴挙へと突き進む。 ヨンナムさんと28年ぶりの再会を果たした母と姉は、共に韓国で暮らすことが出来ない現実を実感しただろう。共に暮らす夢は儚くも夢幻と感じたに違いない。北朝鮮行きを再考するよう言われながらも北朝鮮行きを決行した二人。今回の感動の再会は、二度と一緒に暮らせない現実を突きつけた格好だ。 取材や中継の合間に、高城統一展望台から10キロほど離れた港に行った。美しい海岸線、エメラルドグリーンに輝く海。突き抜けるほど美しい青空。しかし見渡す限りどこまでもどこまでも鉄条網は続いていた。ミスマッチなその光景に胸が痛む。 |
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