南北接近で市民にシワ寄せ?コメ支援に文政権が圧力

06/15 20:00 更新

 米朝会談でイメージアップに成功した北朝鮮の金正恩委員長。しかし、その陰で北朝鮮の市民生活は依然として厳しい状態にあると言われています。38度線付近で、北朝鮮への食糧支援を続けている韓国のNGO(非政府組織)に密着した映像を入手しました。そして、なぜかこの団体には韓国政府から不可解な圧力も掛かっているといいます。15日夜は融和ムードの陰に隠れた朝鮮半島情勢の「いま」を考えたいと思います。  史上初の米朝首脳会談。共同声明では朝鮮半島の平和体制の構築や完全非核化に向けて努力することが約束されました。  北朝鮮・金正恩委員長:「ここまでの道のりは簡単ではなかった。我々の足を引っ張る過去もあり、そのような歴史が時には我々の目や耳をふさいでいたが、我々はすべてを克服し、ここまで来た」  その様子を韓国で見守っていた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は…。  韓国・文在寅大統領:「韓国国民の関心は、すべてシンガポールにあるのではないか。私も昨夜はよく眠れなかった」  そして、米朝両首脳を称賛しました。しかし、脱北者で現在は北朝鮮に物資の援助を行うNGO「脱北難民人民連合」のキム・ヨンファ代表(65)は…。  NGO「脱北難民人民連合」、キム・ヨンファ代表:「米朝首脳会談の結果に期待を持つことはできません。我々が望んだのは、北朝鮮で暮らす人たちの人権回復です。会談では北朝鮮の人権問題には触れられず、私たちは大きく失望しました」  キム代表らは、2年ほど前から北朝鮮への食糧支援を行ってきました。映像は、米朝首脳会談が行われた12日に撮影されたものです。  NGO「脱北難民人民連合」、キム・ヨンファ代表:「これは北朝鮮の黄海南道(ファンヘナムドウ)に送るもので、このペットボトルに1.3キロの米を詰めます。北朝鮮では給料の50日分にもなります」  ペットボトルには米と一緒にメモが入れられています。そこには「神様はあなたを愛しています」と記されています。時には、寄付で得られた米ドル紙幣や虫下しの薬も。そしてUSBメモリー。一体、そこにはどんなデータが入っているのでしょうか。  脱北難民人権連合スタッフ:「トランプ大統領の発言。北朝鮮の芸術団が韓国に来て韓国の歌を歌った時の映像。金正男(キム・ジョンナム)氏の暗殺に関する情報や北朝鮮の人権問題を題材にした映画などが入っています」  去年2月、シンガポールで殺害された正男氏や北朝鮮がいかに非人道的であるかを訴えた映画が入っているというUSBメモリー。これは軍事境界線を警備する北朝鮮兵士に向けたメッセージ。4月27日の南北首脳会談以降、南北融和ムードが一気に広がる韓国国内。板門店(パンムンジョム)を再現した映画のセットは今、韓国人観光客に大人気だと言います。  観光客:「南北が統一したらいいなと思います」「多くの国民が願っているとおり、文大統領と金委員長がもっと仲良くして、他国の首脳たちもその姿を見て、良い影響を受けて祖国統一を支持してくれればうれしいです」  そして、北朝鮮の兵士や住民に対して金正恩体制の批判を繰り返し流していた宣伝放送用スピーカーも撤去されていました。圧倒的な融和ムードにキム代表たちは危機感を覚えていました。  NGO「脱北難民人民連合」、キム・ヨンファ代表:「文在寅大統領も5日間だけでも飢えてみろと言いたいです。北朝鮮の人々は今も飢え死にしている人がいるんですよ」  キム代表らが北朝鮮に送っているというこの米の半分はキリスト教会からの寄付。ペットボトルには、小さな聖書も貼り付けられます。ペットボトルで700本。約900キロ分の米が用意されました。しかし、なぜ彼らはわざわざペットボトルに米を詰めているのでしょうか。その答えは、奇抜な輸送手段にありました。14日、キム代表らが向かったのはソウルから車で約2時間、韓国と北朝鮮の軍事境界線付近にある海辺の町。海を挟んだ北朝鮮まで直線距離で約20キロ。干潮時にペットボトルを投げ込むと潮の流れに乗って北朝鮮の黄海南道に流れ着くのです。この日、集まったNGOメンバーは21人。うち16人は辛い過去を抱えた脱北者。30年前に脱北をしたキム代表も壮絶な経験をしていました。1988年7月。北朝鮮の鉄道警察官だった彼は、機密物資を運ぶ列車の警護にあたっていました。行き先は平壌。しかし、その道中、何と列車が脱線事故を起こしてしまったのです。散乱する物資。それは平壌防衛のために使われる高射砲の弾丸でした。北朝鮮にとって軍事物資は何よりも大切なもの。警護担当のキム代表は、その責任を問われて裁判にかけられることを秘密警察にいる知人から知らされました。その結果は明白でした。銃殺刑…。翌日、夜明けとともに彼は同じ列車に乗っていた同僚4人のうち1人とともに脱北。残った2人は銃殺されたと聞きました。中国、ベトナムなどを転々と逃げながら韓国に入りました。それから14年後の2002年。キム代表は別の脱北者から「あなたが脱北した直後、残された奥さんと2人の娘、生後7カ月の息子さんは“お前たち一家はアメリカのスパイだ”と罵られて惨殺されました」と告げられました。  NGO「脱北難民人民連合」、キム・ヨンファ代表:「私は北朝鮮の内情を詳しく知っていましたら、反逆者の家族として処刑されるしかなかったんだと思います。我々は脱北者の支援をするなかで、今も北朝鮮の人たちがとても過酷な生活を強いられている事実をつかんでいます。とても少ない量ですが、人々の希望になればと思って続けています」  キム代表によりますと、海に投げ込んだペットボトルのうち、破損するものはわずか2、3%で、ほとんどが無事、北朝鮮側にたどり着くといいます。しかし、ペットボトルを手にした北朝鮮の人たちはその米を口にすることはないといいます。実は彼らは米を闇市で売り、そのお金でトウモロコシや家畜の配合飼料を購入。そうすることで、米の何倍もの食糧を手にすることができ、飢えを凌げると言うのです。  NGO「脱北難民人民連合」、キム・ヨンファ代表:「しかし、韓国政府は我々の活動に反対しています。せっかく南北関係がうまくいっている今、この活動を続けることで金正恩委員長の印象が悪くなりますから。でも我々は活動を続けます。北朝鮮で苦しむ人々を救わなければなりませんから」  2年前から月2回のペースで続けているこの活動、金正恩体制が本当に変わらない限り、終わることはないといいます。