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認知症最前線

 
■概要

社会の高齢化に伴って問題視されている認知症。
患者数は増加の一途を辿り、厚生労働省の推計によると、
現在500万人を越える可能性が指摘されています。
一方で今や国民病と呼ばれているのが糖尿病です。
その患者数は予備軍まで含めると全国に2000万人ともいわれています。
症状も原因も異なる認知症と糖尿病ですが、
最新の研究でこの2つの病気は密接に関係し合っていることが
分かってきました。

今回、認知症最前線についてお話を伺ったのは、
九州大学主幹教授の中別府雄作(なかべっぷ ゆうさく)先生です。


■認知症とは

認知症は何らかの原因で脳の細胞が死んだり働きが
悪くなったりして、記憶力や判断力が低下する病気の総称です。
中でも患者のおよそ7割を占めるアルツハイマー病の増加が最近では大きな社会問題となっています。
アルツハイマー病は脳にアミロイドβなどの異常なたんぱく質が蓄積して、神経細胞が壊れて減っていくために起こることが分かっています。
このような症状の進行に伴って脳が萎縮していきますが、
アミロイドβの蓄積などは発症の10年以上も前から始まると考えられています。


■糖尿病とは

一方糖尿病とは、体内の糖をエネルギーとして活用するために必要な
インスリンというホルモンが十分に働かないために血液中の糖が
慢性的に増える病気です。
そのため体中の組織や臓器がエネルギー不足になるだけでなく、
増えた糖でドロドロになった血液が血管に負担をかけ続け、
やがて全身の血管がもろくなるなどしてさまざまな合併症を引き起こします。
多くの血管が張り巡らされた脳も影響を受けやすく、
血管が詰まったり破れたりして脳卒中を起こし、
その後遺症で脳血管性の認知症が発症することは以前から知られていました。


■認知症と糖尿病の関係

九州大学では1961年から福岡県久山町で住民の健康調査を続けていますが、
認知症についても1985年から住民の65歳以上の全員を対象にして調査を続けています。
その結果、糖尿病になると健康な人と比べて3倍程度、
アルツハイマー病になりやすいことが分かってきました。
これは糖尿病の影響でアルツハイマー病の原因となるアミロイドβが脳に蓄積しやすくなるなど、
脳の神経細胞が壊れやすくなるからだと考えられています。
また多くのインスリンは膵臓で作られますが、
最近の研究では脳でも作られていることが分かってきました。
そしてアルツハイマー病の脳では
インスリンの産生や利用に関わる複数の遺伝子の働きが減少して、
脳で糖をうまく利用できなくなるなどして、
脳内が糖尿病のような状態になっていることが分かってきました。


■そのメカニズムについて

私たちの脳内ではグリア細胞が血液中の糖を取り込んで神経細胞に供給しています。
インスリンは神経細胞から分泌されて、
グリア細胞や神経細胞自身が糖を取り込む手助けをします。
そして神経細胞やグリア細胞内のミトコンドリアが取り込んだ糖を
エネルギーに変換しています。
アルツハイマー病の脳では発症する前から神経細胞で作られる
インスリンの量が低下します。
すると神経細胞とグリア細胞で糖が取り込まれにくくなり、
神経細胞ではミトコンドリアからのエネルギー供給が減るので
機能を維持できなくなり、記憶力や判断力が低下します。
さらに機能不全になったミトコンドリアが活性酸素を放出するため、
炎症などのダメージで神経細胞が傷ついたり死滅したりして、
脳の萎縮が始まると考えられているのです。
アルツハイマー病の脳は糖の不足や炎症によるストレスに対して、
とても弱くなっています。
そうした状態で糖尿病を発症するとさらにストレスがひどくなって
アルツハイマー病が悪化するという負の連鎖に陥ってしまうのです。


■まとめ

アルツハイマー病と糖尿病の関係が明らかになったことで脳に
糖尿病治療のようなことをして、
アルツハイマー病に対処しようという取り組みが始まっています。
すでにアメリカではアルツハイマー病の患者さんに対して、
糖尿病の治療に使われるインスリンを鼻から吸入させて、
脳に直接インスリンを送り込む臨床研究が行われています。
その結果、症状の進行が抑えられたことが報告されてきました。
ただ短期間の投与では改善の度合いは小さいため、
これから長期的な効果について調べていく必要があります。
他にもインスリンの働きを回復させることで脳内の糖尿病状態を改善して、
アルツハイマー病を治療する新薬の開発が検討されています。
糖尿病治療薬とインスリン薬の併用でより効果的な治療が期待されています。

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